学校から帰った我が子に「宿題やった?」「少しは勉強しなさい」と声をかけるたびに返ってくるのは、「うるさいな!」「今やろうと思ってたのに!」という反発。
良かれと思って言っているのに、なぜこんなに険悪な雰囲気になってしまうのか…。

「言わなきゃ何もしないのでは?」「でも言えば嫌がられる…」
という不安と疲れに、心が折れそうになることもありますよね。
この記事では、そんな葛藤を抱える保護者の方に向けて、思春期の子どもとの関わり方のヒントや、勉強に前向きになってもらうための具体的な方法をご紹介します。
なぜ、うちの子は言うことを聞かないの?

「もう、どう接したらいいか分からない…」
特に勉強に関して親が何かを言うと、まるでスイッチが入ったかのように反発される…
思春期の反抗は自立のサイン
中学生になると、子どもは心身ともに大きく成長します。親からの精神的な自立を目指し始めるこの時期には、「自分で決めたい」という意識が強くなります。
そのため、親からの「命令」や「干渉」は、自分を否定されたように感じ、つい反発してしまうのです。
これは決して親を困らせたいわけではなく、子どもが大人になっていくための大切な過程です。
思春期の子どもの心理
中学生という時期は、子どもにとって心身ともに大きな変化を迎える多感な時期です。自分の考えを持ち始め、親からの精神的な自立を目指し始めます。そのため、親からの指示や干渉に対して、「自分で決めたい」という気持ちから反発してしまうことがあります。これは、決して親を困らせたいわけではなく、自立に向けた成長の証とも言えるのです。
「勉強しなさい」が逆効果な理由
残念ながら「勉強しなさい」という直接的な命令や指示は、この時期の子どもには特に逆効果になりやすい言葉です。
命令されると、やる気がなくなる心理メカニズム
子ども自身も、勉強しなければいけないことは頭では分かっています。
それなのに「勉強しなさい」と命令されると、あえて逆らいたくなるのが人間の心理です。
さらに、「親の世間体のために言われている」と感じたり、責められているように受け取ったりすると、子どもは心を閉ざしてしまいます。
学習意欲が低下するというデータも
国立教育政策研究所の調査では、「叱責や非難によって7割以上の中学生が学習意欲を失う」という報告があります。
感情的な言葉は、子どもの自己肯定感を下げ、勉強への苦手意識を強めてしまうのです。
親の「指示」を「サポート」に変える方法
「でも、放っておくわけにもいかないし…」
子どもからの反発を恐れて何も言わない、というのも親としては心配ですよね。では、どのように関われば、子どもが前向きに勉強に取り組んでくれるようになるのでしょうか。それは、親が「指示役」ではなく、「伴走者」に徹することです。
親は「伴走者」に徹する
子どもに自ら考えて行動してもらうためには、親が一方的に「こうしなさい」と指示するのではなく、子ども自身の考えを引き出すような問いかけをすることが有効です。
「どうしたらできると思う?」と問いかける
例えば、「どうしたら宿題できそう?」「何から始めるとやりやすいかな?」といった質問を投げかけてみましょう。
大切なのは、親が答えを与えるのではなく、子どもが自分で考える機会をつくることです。
親はそのプロセスに寄り添い、必要なときに手助けをする「伴走者」になりましょう。
小さな成功体験を積ませるスモールステップ
自分で考えたとしても、最初から大きな目標を設定してもうまくいかないことがあります。特に勉強に苦手意識があったり、自信がなかったりする子どもは、「どうせ無理だ」と諦めてしまうことが多いです。
「できた!」の感覚が自信とやる気を育てる
最初から大きな目標を設定すると、「どうせ無理」と諦めてしまう子もいます。
そこで、たとえば「教科書1ページ読む」「英単語を5つ覚える」など、簡単に達成できる目標から始めましょう。
小さな成功が次のステップにつながる
「できた!」という体験を重ねることで、「自分にもできるかも」という前向きな気持ちが生まれます。
これは、子どもの自己肯定感を育てる大きな一歩になります。
プロセスや努力を具体的に褒める
小さな成功体験を積み重ねる上で、親の「褒める」という行動は非常に重要です。ただし、単に「すごいね」「えらいね」と言うだけでなく、何をどのように頑張ったのか、具体的に褒めること が大切です。
「結果」よりも「頑張りの中身」に注目
「すごいね」だけでは伝わりません。「教科書1ページを集中して読んだね」「自分で調べて頑張ってたね」など、努力の中身やプロセスを具体的に言葉にして伝えることが大切です。
結果の点数だけでなく、努力したプロセスや具体的な行動を認め、言葉で伝えましょう。 これにより、子どもは「自分の頑張りを親は見てくれている」「努力は無駄ではない」と感じ、自己肯定感が高まり、さらに頑張ろうという気持ちになります。
信頼関係を築くための日々の関わり
「勉強の話以外でも、なんだかぎこちなくて…」
勉強のことで衝突が多いと、親子のコミュニケーション全体がぎこちなくなってしまうことがありますよね。しかし、子どもが安心して勉強に取り組むためには、何よりも親子の信頼関係が基盤となります。
共感的理解を示す
子どもが「疲れた」「無理」と言ったり、やる気がないように見えたりする時、つい責めるような言葉が出てしまいそうになりますが、まずは子どもの気持ちに寄り添い、共感的な言葉をかけること が大切です。
「部活で疲れたよね、毎日大変だね」 「難しい問題ばかりで嫌になっちゃう気持ち、分かるよ」のように、子どもの状況や感情を理解しようとする姿勢を見せましょう。親が自分の味方だと感じられれば、子どもは心を開きやすくなります。
勉強以外のコミュニケーションを大切にする
勉強の話ばかりしていると、子どもは身構えてしまいます。普段から、勉強に関係ないたわいもない会話を増やし、安心して話せる関係性 を築くことが重要です。
趣味や学校生活、友達のことなど、子どもの関心のある話題に耳を傾け、子どもの意見や気持ちを尊重する姿勢を見せましょう。これにより、子どもは家庭が安心できる場所だと感じ、困った時にも相談しやすくなります。
第三者(塾講師など)の力を借りる
親が言うと反発するのに、塾の先生や学校の先生の言葉なら素直に聞ける、ということは珍しくありません。親だけで抱え込まず、塾の先生のような第三者や専門家の力も借りる ことを検討しましょう。 塾の先生は勉強のプロであり、お子さんの学習状況を客観的に見て、適切なアドバイスやサポートをしてくれます。定期的な保護者面談などを活用し、塾と家庭で連携してサポートしていくことも有効です。
おわりに|親の「関わり方」が、子どもの学ぶ力を育てる
「勉強しなさい」と言うたびに子どもに反発され、つい感情的になってしまう…。
でも、その反発は、思春期特有の「自立したい」という気持ちの表れでもあります。
感情的な衝突を避けるためには、親が「指示役」から「伴走者」へと立ち位置を変えることが重要です。子どもに「どうしたら自分でできると思う?」と問いかけ、自分で考えさせる機会を与え、小さな目標設定 と具体的なプロセスへの承認 を通して成功体験を積み重ねさせましょう。
そして、何よりも大切なのは、日々の共感的なコミュニケーション と、勉強以外の話題も含めた良好な親子関係 です。必要であれば、塾の先生のような第三者の力を借りることも有効な手段です。
すぐに劇的な変化が見られなくても、焦らず、根気強くこれらのアプローチを続けることで、お子さん自身の中に眠る学ぶ意欲や、自分で考えて行動する力が育まれていくはずです。
「言わなきゃ進まない。でも言うと嫌がる…」 このつらい板挟みから抜け出し、お子さんとの新しい関わり方を見つけていきましょう。親も子も一人ではありません。

